水谷vs張本の相性について


※この記事は「張本智和は水谷隼を超えたのか」の補足記事です。
 まだご覧になっていない方は、先にそちらをご覧ください。

この記事は大きく3つのテーマで書いています。
① 水谷選手のバックハンドが張本選手対策に”△”な理由
② フォアハンドで張本選手対策をするとすれば
③ 水谷選手の緩急について(補足)

① 水谷選手のバックハンドが張本選手対策に”△”な理由


ラリーにおける張本選手の最大の武器は、皆さんご存知のバックハンドのライジング強打です。それを完全に防ぐにはフォアを狙うしかありません。
そのフォア狙いをするのに十分なバッククロス(張本選手のフォア)へのボールが現段階ではないように見えます。

より正確そうな表現で言えば「打とうと思えば打てるが、犠牲にしなければいけない部分が多いので採用しない」のだと思います。

理由は3つあります。

1)技術的バランス上、バックハンドに比重を置きすぎるとフォアが崩れるリスクがあること(使用可能パワーのトレードオフ)
2)水谷選手が肩にケガを抱えていること。程度やけがの質が分かりませんが、“高強度のバックハンドを多く練習できるのか?”という問題です。
3)「世界の多くの選手に勝つ」ことを考えたときに①と②のリスクをとることが正しいと判断しづらい

水谷選手の中で「ビッグゲームでのタイトル>張本選手に勝つこと」のはず。
ですから、上記3つを考えたときに、張本選手対策のバックハンドをメインの練習に据えることはないと考えられます。


② フォアハンドで張本選手対策をするとすれば

目線を逆側に移し、フォアでの打開策を見つけるとすればどうなるか。

このケースでは張本選手のバックサイドをカーブで狙うという作戦も考えられます。これは許昕選手が得意とし、張本選手にも使う戦術です。


図:カーブドライブでサイドを狙い、返ってくるコースを限定する

この方法では張本選手目線からすると、下記のような感じになります。

1) クロスに返すと延々バックサイドを突かれてミスを誘われる
2) バックサイドに返球しようとすると少し甘く入りやすく、失点につながる怖さがある

この戦術は許昕選手の球の“エグみ”も込みで効いている印象なので、仮に水谷選手が採用するなら球質などは水谷選手に合った形に加工しなければなりません。


③ 水谷選手の緩急について(補足)

「張本智和は水谷隼を超えたのか」でも書きましたが、水谷選手の台上は、とてもタイミングに幅があり、緩急に富んだ球質で対戦相手を翻弄します。

「急」を使う台上のうまい選手が多いので、水谷選手の台上で特に目立つのは「緩」の方です。

これは少し離れたところで相手の攻め手を利用してプレーしてきた水谷選手の、優れたディフェンス(カウンター)技術があってこそできる技です。

例えば、2019年の全日本選手権決勝でセットカウント2-1、4-2から2点取るシーンなどは台上の緩急が良く観察できます。

1) 4-2で大島選手のYGをあえて(に見える)ミドル前に浮かせて、少し距離を取って台上で強打してくるのを待つ → 大島選手のチキータをバックへカウンター
2) 5-2から、前の1点で大島選手に「あのボールは、もっとしっかり前に出て打たないと」というイメージをつけての、鋭いツッツキ

水谷選手の「急」は優れた「緩」が効いてこそ輝くので、「緩」を使った瞬間にフォアフリックやチキータで一撃を狙いに来る張本選手には使いにくいものになります。

しかし、「急」だけでプレーをすることは、張本選手の主戦場に踏み込むことになるので、水谷選手にとっては不利に働いてしまうのです。


次のブログでは、歴史を紐解くことによって対策を考えていきたいと思います。

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