ラポーム 2022年3月

2022冬季北京五輪は新型コロナ感染厳戒態勢の下、2月20日に無事終了しました。

スポーツと政治の関係、ドーピング問題、ルールの遵守違反など、スポーツの生命線にかかわる問題が強調されたようにも感じましたが、大多数の、正々堂々と戦ったすべての選手には、勝敗や順位にかかわらず心から感謝と賞賛の気持ちをもって拍手を送ります。
彼らこそ人類に平和をもたらす強靭な肉体と強靭な精神を持った清々しいスポーツの代表者たちです。

様々な課題を抱えているオリンピックであり、スポーツですが、対極には心温まる“ちょっとあったいい話”や感動的な素晴らしいドラマがたくさんあったはずです。

私にとっては、スピードスケート女子500メートルの小平奈緒選手の怪我と向き合いながらの自分との格闘が印象的でした。

小平選手は2018年韓国平昌オリンピックの500メートルをオリンピック記録で優勝しました。レースを終え、敗れた地元韓国のヒーローである李草花(イ・サンファ)選手にレース直後寄り添い、リスペクトを伝える小平選手に、私は理想的な勝者の姿を感じたことを思いだしました。

今回の冬季北京オリンピックでは、小平選手はスタートで出遅れたが「過ぎてしまったことは取り返しがつかない。残りの480メートルはとにかく夢中になるしかない一心で滑った」とコメントしています。

このレースを韓国KBS席で見ていたイ・サンファ氏が大粒の涙を流していたのを映像で見ました。
日本のヒーローと韓国のヒーローの素晴らしい友情はスポーツが日韓両国民を大いに近づけたと感じました。

小平選手は、女子団体追い抜き(パシュート)の決勝で惜しくも敗れ沈んでいる高木美帆選手達に「パシュートの進化はあなたたちがレベルを上げてきたからだよ。すごい誇れること」と励まし、前を向かせてくれたと高木選手は驚きと感謝を語っています。(2月19日、日経新聞記事、鱸正人記者)

荻村伊智朗さんが著書の中で「冷静にワンチャンスに賭け続けながらも従容として敗戦への道を“王者の行進”をした、佐藤博治さんの負けっぷりから、私は自分の試合のどんな大事な場面にでも忘れがたい大きな教訓を佐藤博治さんから学んだ。」と書かれています。1952年のことです。

見事な勝ちっぷりを2018年に平昌で、見事な負けっぷりを2022年冬季オリンピックで後輩選手達に示し、スポーツの価値を表現してくれた小平奈緒選手にスタンディングオベーションです。
ITS三鷹 代表 織部幸治

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