「全農cup東京大会 伊藤美誠対平野美宇」ラポーム 2023年8月号 -東京の卓球スクール-

全農cup東京大会 伊藤美誠対平野美宇

7月23日(日)全農cup東京大会、女子シングルス準決勝の伊藤美誠対平野美宇戦は色々な意味で本当に素晴らしいゲームでした。

まずハイレベルという意味では、中国のトップレベルに匹敵するゲームが日本国内で行われた1970年代以降では数少ないゲームではないか、と思いました。

2024年パリオリンピック代表選考レースを続けている二人の試合は、1ポイント、1ポイントがすべてギリギリで、これこそ世界のトップクラスの卓球のゲームというものでした。

中国卓球が長い間世界の頂点に立ち続けているのは、このレベルの試合が頻繁に行われているためだと思います。

会場は、それこそ水を打ったように静まり返り、すべての観客が二人のラリーを息を殺して見守っていました。今までにはないような競技場の尋常でない静けさも感じました。

ゲームは両者が持てる力を発揮し、3-3のゲームオールとなり、7ゲーム目も一進一退で10-8と平野選手がマッチポイントを握りました。

ここから平野選手のバックへのロングサーブに対して、なんと伊藤選手は回り込んでフォアハンドスマッシュレシーブを放ちました。

このボールがぎりぎりエッジボールで入り10-9。

この局面で今まで見せていない回り込みレシーブスマッシュを選択するところが、伊藤選手の素晴らしいところです。

審判はエッジに気づかず11-8としましたが、平野選手が即座にエッジを主張。
卓球競技に根付いているスポーツマンシップを感じる誇らしく美しい光景でした。
観客からも平野選手に対して大きな拍手が送られていました。

次も平野選手のサーブでラリーは始まり、平野選手の3球目フォアハンドドライブに対しての伊藤選手のバックハンドが今度はネットインで入り、10-10となりました。

その後伊藤選手が連取し、12-10で伊藤選手が勝利しました。

「99%負けている試合に勝った」という伊藤選手の試合後のコメントでしたが、最後まで攻め抜いた伊藤選手の精神力はやはり「大魔神」でした。

「ハリケーン」の異名を持つ平野選手にとっては悲劇的な試合でしたが、この体験は必ず本番の大舞台で「ツキ」となって生きることだろうと思います。

競技力の高さにおいても、スポーツマンシップにおいても新しい日本卓球の幕開けを感じるような素晴らしい試合を見ることができました。
         ITS三鷹 代表 織部幸治

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