「競技力向上と友好がスポーツの価値」ラポーム 2024年3月号 -東京の卓球スクール-
競技力向上と友好がスポーツの価値
新型コロナウイルスの流行により3回の延期の後に中止となっていた、韓国では初めての開催となる世界卓球選手権大会が2024年2月16日から25日まで釜山で行われました。
多くの試合が予選リーグの1回戦からテレビやネットで観戦できるようになり、日本にいても世界選手権大会を満喫できるようになりました。
信じがたいような速いラリーが何回も続いたり、見たこともないようなトリッキーなプレーが出てきたりして、近年の選手の飛躍的な競技力向上を世界釜山大会でも感じました。
特に5大会連続となった女子団体決勝の日本対中国は2対3の素晴らしい激戦でした。
あの、何ものにも動じない(かと思える)中国女子選手たちが、決勝後のインタビューで勝利の涙を流していたというニュースには、驚きました。
確かに2-2で迎えた5試合目の張本美和選手対陳夢選手の試合は張本美和選手が中盤リードする展開でしたから、日本が53年ぶりに中国に勝ち、優勝を勝ち取るチャンスは大いにありました。
日本卓球は本当に中国卓球に勝てる日が近くに来ていると感じます。
しかし一方で早田ひな選手と張本美和選手が孫頴莎選手に敗れた1番と4番の試合では、共に0-3の完敗でした。
2人合わせて6ゲームで32点(孫頴莎は66点)しか得点していません。
トップ選手の層の厚さは中国卓球に近づいているとはいえ、日本のエースと中国のエースとの競技力の差はむしろ広がったと感じさせられた試合でした。
中国卓球に勝つという大きな目標を持つ日本卓球としては、百里のうち九十里まで来たのかもしれませんが、まだ道半ばと考えることが必要なのかと思います。
女子団体決勝の日本対中国戦で「いいね」と思ったもう一つのことは、4番で世界ランクNO.1の孫頴莎選手が早田ひな選手に快勝した試合後の握手の時に、右手だけでなく左手を添えて握手をした瞬間でした。
1-2とリードされた中国卓球がエース対決で何とか2-2に追いついた瞬間にみせた相手に対しての敬意は、1926年の国際卓球連盟創設以来、卓球が最も大切にしている仲間文化を世界NO.1の孫頴莎が世界1を決める最高の舞台で、世界に発信してくれたことでした。
2024世界卓球釜山大会は卓球競技の発展と世界卓球家族主義という卓球の文化が随所に感じられた素晴らしい大会でした。
ITS三鷹 代表 織部幸治