「ドライブロングサービス 」ラポーム 2024年6月号 -東京の卓球スクール-
ドライブロングサービス
「ドライブロングサービス」それは若き荻村伊智朗選手が最も得意としたサービスです。
1954年の世界ロンドン大会の代表が決まる1953年の全日本選手権大会のベスト16決定戦で荻村さんに敗れた当時日本代表候補の実力者だったカットマンの藤井基男さんは「荻村さんの快速サーブにやられた。」と後に語っておられます。
ロンドン大会に出場した荻村さんは、そのドライブロングサーブで当時の世界的選手から最初の5本連続ノータッチで得点したそうです。まるでテニスのようです。
荻村さんは国内外の200のトーナメントで優勝したそうですから、そのドライブロングサービスのすばらしさ(凄さ)を体験した選手はかなり多いことと思います。
荻村伊智朗選手にとってドライブロングサービスは、単に数ある技術の中の一つの技術ではなく、荻村さんが目指したもの、そのものなのだと感じます。
すなわち「世界一速いサービスを出して、相手に早く返させ、そのボールを狙い、その短い時間の中で自由自在にプレーし、どんなに速い選手にも必ず勝つ」という究極の勝負哲学がドライブロングサービスに凝縮されていたのです。
その目標を達成するため荻村さんは、過酷な訓練を自分に課しました。
サーブ練習は動作の様々な研究と工夫を重ね毎日1~2時間、体力トレーニングはうさぎ跳び(当時はうさぎ跳びは常識でしたが、荻村さんは1~2Kmもやったそうで、これは桁外れです。)ランニングは5~20Km(これも桁外れ)、壁打ちは2年間の訓練で1メートル前の垂直の壁に水平にボールを打って、水平のラリーを100球ノーミスで続けられるまでになったようです。(誰にも負けない圧倒的なスピード感覚です)
そしてそれらのトレーニングを開始して3年後には誰よりも速いサーブを出し、誰よりも速く構え、誰よりも速く返ってくるボールを正確に打ち返すことができるようになり、計画通り世界チャンピオンになったのです。
驚くべき考え方と、実行力です。
荻村さんは「卓球選手にとって最も大切なものは時間です。」という言葉をのこしておられます。
一つは「卓球において時間とは何かをじっくり考えること」もう一つは「そこから導き出した自分なりの目標とそれを実行する時間」なのだと私は思います。
現在の卓球でいえばチキータレシーブがそのような技術にあたるのかと思います。
ドライブロングサービスをテーマに卓球教室を進める中で感じていることを今回書かせていただきました。
ITS三鷹 代表 織部幸治